【消化器外科】疾患 仕事内容①

消化器外科医が扱う疾患

アッペ、ラパ胆、ヘルニア、ヘモ

市中病院で若手が扱うことが多いのがこの手の疾患です。

具体的にはアッペ(虫垂炎)は若い人の腹痛で最も多い病気です。

お腹が痛い女性

俗に言う盲腸のことです。英語でappendicitisなのでアッペです。

 

ラパ胆は胆石のある患者さんの急性胆嚢炎に対する手術です。

ここ数年、症例は非常に増えており、若手の外科医が執刀する機会が多い病気でしょう。

 

消化器外科が扱うヘルニアは整形外科が扱うヘルニアとは違います。

ヘルニアは飛び出すという意味だそうです。

消化器外科の言うヘルニアは脱腸のことです。

脱腸は手術する以外に治す方法はありません。

 

ヘモは痔のことです。英語でhemorrhoidと言います。

塗り薬で治ることが多いですが、手術を行うことも多い疾患です。

 

これらの疾患はおそらく今後もなくなることはないでしょうし、高齢化が進む日本においては増え続けるかもしれません。

 

消化器外科が扱う癌は非常に多彩です。

それぞれのがんが今後どうなっていくかを、一次予防、二次予防の観点から解説したいと思います。

 

食道がん

喫煙者が減っているので、今後もなくなっていくかと思われるかもしれません。

しかし、食道がんの最大のriskは飲酒になります。

一次予防の観点から言うと、喫煙者は減りますが、飲酒習慣は今後も続くと思われます。

ワインが好きな人、ビールが好きな人など。

飲酒習慣は日本においてはある人とない人にはっきり別れます。

食道がんは95%以上は飲酒習慣のある人です。

よって、一次予防の観点からすると今後も食道がんの手術はなくならないと思います。

ただし、二次予防の観点では、食道がん胃カメラで早期発見できます。

早期発見すれば、食道がん内視鏡治療で治癒できます。

よって、飲酒習慣のある方は特に胃カメラを年に1回程度受けておくことを特におすすめします。飲酒をやめるよりはずっと楽ではないでしょうか?

 

胃がん

胃がんの手術は今後はかなりのスピードでなくなっていくでしょう。

胃がんの原因の90%程度はピロリ菌によるものです。

ピロリ菌は胃がん胃潰瘍の原因になりますが、

ピロリ菌が発見されたのは1983年です。

医学の歴史でいうと、ほんの最近のことです。

 

現在ではピロリ菌に対する除菌療法が確立されているため

ピロリ菌感染者は減っており、胃がんは今後急激になくなるでしょう。

一次予防が功を奏しているパターンです。

私たち消化器外科医にとっては、胃がんは過去の病気となると考えています。

 

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検査キットは今も使えるかどうかは不明です。

 

大腸がん

大腸がんは最も増加傾向にあります。

実際に手術を行う件数も増えています。

大腸がんの主な原因は食事の欧米化がかなり関与していると言われています。

ただ、一次予防の観点からいうと、食文化を変えるのはほぼ不可能に近いと考えます。

昔の日本のように肉を食べずに、魚を食べる、といった食生活に戻すのは困難だと思います。

しかしながら、二次予防の観点からいうと、2年に1回大腸カメラを受けておくと

手術が必要になる可能性はかなり低くなります。

仮に手術になっても、手術で治る可能性はかなり高いです。

doctor-syokaki.hatenablog.com

 

大腸カメラの検診さえ進めば、消化器外科医の仕事の半分以上はなくなると思います。

 

肝臓がん

肝臓がんに対する手術はここ数十年でかなり変化しました。

昔はB型肝炎C型肝炎が原因で肝硬変→肝臓がんのパターンが非常に多かったです。

肝硬変から肝臓がんを発症するパターンの肝臓がんを原発性肝がんと言います。

B型、C型肝炎は共にB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスが原因となりますが、

どちらも、輸血や昔の注射針の回し打ちが原因で感染が広まったとされています。

現在は、原因ウイルスがしっかり同定されているし、

輸血は安全なものしか使用できないことになっています。

予防接種の回し打ちなんて、日本ではどこでも行われていません。

 

よって一次予防の観点から、原発性肝臓がんは激減しています。

最近ではウイルス性の原発性肝がんを担当することは激減しましたが、脂肪肝やアルコール性肝障害が原因の原発性肝がんが増加傾向にあるように思います。

 

しかしながら、大腸がんの肝転移に対する手術は大腸がんの増加とともに、増加しています。

大腸がんが肝臓に転移すると、大腸がんのstageⅣ(最も進行している段階)になりますが、大腸がんの肝転移は肝臓の手術により、治癒する可能性が十分にあります。

 

まとめますと、

今後はウイルスによる原発性肝がんはほぼなくなる。

脂肪肝やアルコール性肝障害が原因の原発性肝がんはやや増加している。

大腸がんの肝転移(転移性肝がん)は増加傾向。

となります。

ここで、くどいようですが、大腸カメラをしっかり受けていれば当然大腸がんによる転移性肝がんは発症するはずがありません。

ですので、やはり

大腸カメラの検診が進めば、消化器外科医の仕事はなくなります。